そんな第3回廊を1周しながら、中央祠堂の中芯に、ヒンズー教の寺院にも関わらず仏像が安置されてることに違和感を覚える事無く、今度はあの階段を、どうやって下りようかと、不安がっていると、別の処に手摺の付いた階段を見つけて、胸を撫で下ろす事が出来るような始末でした。それでも危険な階段を慎重に下り終わって、ふと振りかえると、そんな危険な祠堂の外壁の狭いスペースに西欧の若者が何人もへばり付いているのです。彼らは、そこから太陽がジャングルの西の彼方に沈むのを、じっと見つめるそうなのです。オリエントの神秘を奇跡のアンコールワットの中で感じていたいのでしょう。

ミャンマー・カンボジア編
僅かな時間で色が金色に変わったアンコールワット

そんな彼らの視線を背中に受けて、ゆっくりゆっくりと、元来た参道に下りたって、私達は異常な光景を目にする事が出来ました。そうです、今下りて来たアンコールワットが金色に変わり初めているのです。参道の向こうに夕陽が沈もうとしています。近くの石はまだ本来の灰色です。だけど高い処の祠堂は金色に変わり始めていました。振りかえり、振りかえり、長い参道を帰って行くと、今通り過ぎた塔門も金色に変わっています。そして、お濠の外から眺めるアンコールワットの全景は、本当に不思議な事だけど、全てが金色に染まっていました。 

その長い参道を通って西塔門をくぐると、目の前に、西に傾きかけた太陽を全面に受けて、天に向かって凛々しく立ち上がろうとする鼠色の石で出来た4の祠堂と中央祠堂が第一回廊の向こうに浮かびあがっていました。さらに続く長い石畳の参道をゆっくりと歩いて中心部に近ずき、そして中へ入っていきました。第一回廊のレリーフを、ゆっくり見ながら1周し、階段を上って第2回廊へ。そこも半周して第3回廊の下のテラスに出てビックリです。第3回廊に登る階段が信じられないほど急勾配なのです。この階段を登ると言います。見上げれば私達と同年輩の人達も登っています。これはひき返す訳にはいかないと、気を引き締めて登る決意を固める私でした。一応、もし、かみさんが落ちてきても受け止め様と、真下でかみさんの登頂を見届けた後、さて私の番だと登り始めると、首に掛けたカメラが階段に当たるのです。それほど急勾配だったので、少しみっともなかったけれど、カメラを背中に担いで、両手を使って、その階段を登りきりました。上から見下ろすと、タイの暁の寺院を思い出したけど、あそこに比べたら、ここは危険過ぎます。

 その後は、テレビで何度か見たことの有る、あのガジュマロのジャングルに飲みこまれた遺跡、タ・プロームです。
そこは、まさにエイリアンに襲われた石造の寺院のようでした。高さが何十mもあるガジュマロの木があらん限りの根を広げて、その中に崩れ落ちかけた建物を組み敷いているのです。その生物はそこら中から水分を奪って、その建物を干からびさせているのです。以前はもっとすごくて、建物の姿が見えないぐらいだったみたいです。その時私は、38年前に見た、外国の雑誌ジオグラフィの写真をなぜだか、はっきりと思い出していました。

そして、やっぱりカンボジアも暑かった。お昼頃、タ・プロームを後にした私達は、昼食と休憩の為に一端シェムリアップの町に戻りました。そして、ホテルで3時まで休んだのち、再びアンコールワットの見学に出かけるのでした。アンコールワットは150m以上の幅の濠に四方を完全に囲まれています。アプローチは正面にある西参道だけです。この参道は大きな石畳なのですが、右半分だけフランスによって修復されていましたが、左半分は崩壊したまんまでした。この左半分はこれから日本が修復する事になっているそうですが、どちらが上手く出来るか、地元の人達の話題になっていると云う事でした。

2001年4月29日〜5月5日
5日目

 そこでドンさんの提案でした。予定では午前中はアンコールワットで午後からアンコールトムを見学するようになっていたけど、順番を入れ替えましょう、と言うのです。もちろん我々には良く分からない事なので、ドンさんに任せました。だから午前中は、アンコールトムの南大門から入って、バイヨンの回廊を一周し、パプーオンの空中参道を通って王宮に入り、ピミアナカスを左に見ながら、塔門をくぐって、象のテラスの階段を降り、勝利の門と呼ばれる西門を通ってアンコールトムを後にしました。

夕日を受けて色が変わり始めた正面
ホーム
トップ
6日目

ドンさんが寄って来て、誇らしげに話します。“これが、私が皆さんにお見せしたかった光景です”と。確かに、いつも必ず見られると云う光景では有りません。私達は運が良かったのでしょう。うちのかみさんなんか、あまりの美しさに興奮して、お濠の欄干の上で、昨夜みた民族舞踊の真似などする始末です。それにしても美しい。正にオリエントのマジックを体感する事が出来ました。ドンさん、ありがとう。

<カンボジア2日目>

 次の日は、今度は朝やけに染まるアンコールワットを見ると言うことで、朝早く起きて、まだ夜明け前のアンコールワットの幅広いお堀を横断する参道を通って西門から中に入りました。正面に石の塔(祠堂)と回廊が、白みがかった真後ろの東の空に、黒いシルエットをくっきと浮かび上がらせています。西門を背に待つこと30分。今回も雲が多くて、アンコールワットは朝焼けに染まることは有りませんでした。そんなことで、ちょっと残念な気持ちを引きずって、私達は朝食の為に一端ホテルに引き返し、その後あらためてアンコール遺跡の見学に出かけるのでした。

お調子者のかみさん
手摺が付いてる階段
第3回廊に登る階段
アンコールトムの南大門
西参道から右に寄った処からのショット
お昼過ぎのアンコールワット
タ・プローム遺跡
バイヨン寺院の4面仏