結局、通関には時間がかかりましたが、無事マイシューズでゴルフをカミさんと二人でのんびりと楽しむ事が出来ました。実際、のんびりとゴルフを楽しむことが出来たのです。と云うのは、そのアリキカパカパコースには他のプレーヤーがいなかったみたいです。さらに、グリーン以外は全てのエリアで電動カート乗り入れOKです。1ラウウド120〜130たたくカミさんとのゴルフでは、これは助かりました。
ガイドブックで下調べはしてありましたが、日本の温泉と違って水着必着なので、当然ですが全ての場所で混浴です。私達は料金の一番高いラグジュアリーコースを選びました。料金は一人約2000円です。そのコースはロトルア湖に面したエリアに5〜6種類の露天の岩風呂が配置してあり他の場所からはロッカーハウス、マッサージ室、カフェテリア等で隔てられているので、確かにラグジュアリーな感じでした。
ロトルアに着いた翌日は予定通りのゴルフです。ロトルアゴルフクラブの「アリキカパカパARIKIKAPAKAPA」と云う、すごくマンガチックな名前のコースです。本当はマオリ語で何か意味が有るのでしょうが、分からずじまいでした。日本からクラブ一式を持って行くのは面倒くさかったのと、カミさんとの気楽なゴルフだからゴルフ場の貸しクラブでいいやって思っていましたが、シューズだけは自分のでと思い、お互いスーツケースに詰め込んで来たわけですが、空港でちょっとした失敗をやってしまいました。
ちなみに、このコースの中にはところどころに泥沼地獄のような温泉の噴出場所が有ります。日本のウォーターハザードの様な感覚ですが、煙が出ていない場所は初ラウンドの人には分かりません。私は1回入れましたが、打てる状態だったので、そのまま打っていきましたが、カミさんは3回も打ちこみ、毎回ボールが回収出来ない状態だったので憤慨していました。スコアカードの裏にはローカルルールとして「無罰で特設ティーから可」と書かれていました。
ゴルフの後は温泉です。ロトルアは間欠泉でも有名なように温泉の町です。なんたって、ゴルフ場の中に噴出してるぐらいですから。大分県別府市とは、早くから姉妹都市になっていました。そのロトルアでも一番大きな温泉施設が私達のホテルの筋向かいです。これはもう、是非体験しなければと、ゴルフから帰るとすぐに歩いて出かけました。
私達は一番奥のロトルア湖にほとんど接している、あまり大きくない露天の岩風呂に入っていました。そこに筋肉隆々の映画スターの様な青年がやって来て「日本人か?」と尋ねます。私が「そうだ」と答えると、急に嬉しそうに「自分は英会話学校の教師として1年間栃木市で生活した事がある」「今日は、いとこの結婚式に出席するためオーストラリアのシドニーからやって来た」と話しかけて来ました。彼は一度、岩風呂の中に浸かりましたが熱すぎると云って岩に腰掛け、足だけ湯の中に浸けていました。英語のまったくだめなうちのカミさんは、始め少し離れた処にいましたが、彼がラグビーの選手だと話すと、にわかにすり寄って来て、彼のすばらしく盛り上がった胸の筋肉をさわったり、たたいたりしながら「ナイスボディー、ナイスボディー」と連発するものだから、私は少し恥ずかしくなりました。
税関でいつものように日本人パス見たいな感じで通り抜けようとすると、大きな体格の税関職員が「ちょっとまて!」と云います。なんだろうと思うと「シューズを持っているだろ?」と云うので「持ってません!」と答えてしまいました。実際、その時は、ゴルフシューズの事をすっかり忘れていました。それに、税関ではクスリとか偽札とか犯罪に関わる事に注意を払っているのだから「私達には関係ない処」だと云う気持ちを日頃から持っていたものだから、ついつい反射的に「持って無い」と答えてしまったのです。
「それじゃスーツケースを開けろ」と云います。「面倒くさい事を言うやつだな」と思いながらスーツケースを開けると、心臓がドキンとしました。ゴルフシューズのことを思い出したのです。そのでぶっちょの職員はめざとくシューズケースを見つけると、大きな手でわしづかみにするとスーツケースの中からひっぱり出しました。不安がる私達を横目で見ながら彼はシューズをケースから取り出すとプラスチックのトレーの上に置きます。そして机から出したブラシで私のシューズにブラッシングを始めました。
何が起こったのだろうといぶかっている私に彼はやさしい表情で説明してくれました。「ニュージーランドは農業国なので外国から植物の種や昆虫の卵が付いているかも知れない土を持ち込まれては困るのだ」と云うことでした。私のシューズをブラッシングした後、カミさんのシューズも取り出し、ていねいとは言い難かったけれど、彼は、彼なりにきれいにブラッシングをして着いていた土を落としてくれました。
ふと気が付くと、彼の後ろに若い女性が立っています。「奥さん?」と聞くとそうだと云うので、私は慌てて彼の傍のスペースを開け、彼女に一緒に岩風呂に入るよう促しました。ところが、彼女も一度は肩まで浸かったのだけど熱過ぎると云って、彼の横に腰掛けてしまいました。私はと云うと、うちのカミさんに彼と肉体的に見比べられるのがいやで、少し我慢しながら湯船に浸かっていました。
変な話だけど、ちょうどそこに、日本の某大手旅行会社の旗を持った20人ぐらいのグループの人達がが服を着たまま入って来て通路を歩いています。何が起こったのだろうといぶかっていると、若い女性のツアコンが寄って来て、「日本の方ですか?」と聞くので、「そうです」と答えると、「おじゃまして、すみません!ツアーの一環なんです。」って云います。嘘だろう!まったく、なんて失礼な日本人達なんだ!って私は思いました。その間にオージー夫婦は私達に小さな挨拶をして、ロッカールームの方へ消えていきました。「まったく、なんて失礼な日本人達なんだ!」って彼らも、特に若い奥さんは思ったのでは無いでしょうか。